高級ワイン、バローロ

ブラ市-2013年12月28日 イタリアのピエモンテ州、クネオ県のワイン製造会社、アスケーリ社を2013年仕事納めの日に訪ねた。 まず、 トリノ市から冬のヘーゼルナッツ畑かブドウ畑かの区別がつかない耕作地を通ってアルバ市を訪問。
                    街の中心地にあるドゥオーモ内には、クリスマスの時期に飾られるプレゼピオを見ることが出来た。アルバ市は、アスティ、ブラと並んでピエモンテ産葡萄酒の集散地として知られている。いずれはポー河に流れ込むターナロ川の左側(北西側)はロエーロ、右側(南東側)はランゲと呼ばれる。このターナロ河に接したアルバ市を出た後、南下してブドウ畑を眺めながらブラ市へ向かった。わざわざ遠回りした理由は、イタリアワインの王様とされる≪バローロ≫の名前の由来、バローロ町の近郊を見るためである。
                     丘に上がり、ランゲ地帯の冬景色を一望した後、ブラ市に到着した。このブラ市は、毎年9月に行われるチーズ祭りでも有名である。イタリア全国は勿論、ヨーロッパのチーズ業者が一同に集まる。アルバ市、ブラ市ともに中世の面影をしっかり残した落ち着いた街である。夕方、ブラ市の中心地街からちょっと外れた1880年から続くワイン醸造会社アスケーリ社を見学し、7代目社長マッテーオ・アスケーリ氏からお話を伺った。ターナロ川を挟んだロエーロ地帯とランゲ地帯とでは、全く地質と地形が異なり、同じ品種を栽培しても性格の異なったブドウが生産される。ロエーロ産のブドウは、若い段階で飲むのに適したワイン種に、ランゲ地帯産のブドウは熟成ワイン種に適しているという。当社は、ランゲ地帯とロエーロ地帯に直接栽培している三か所のブドウ畑を所有しているが、同じネッビオーロ種のブドウから、4種類のワインを醸造するとのこと。今回は、バローロについての説明を頂いた。ランゲ地帯で収穫されたブドウは敷地内の工場で搾汁、発酵される。現在では、ステンレス製の圧搾機とタンクが使用されている。この巨大タンクは、温度を一定に保たち、重さの違いから種、果皮、果肉と層が出来るのを時々かき混ぜるシステムが備わっている。発酵が終わると樽での熟成期間。樽ごとにブドウの収穫年とブドウ畑の名前の記されたラベルがついている。二種類の大きさの樽のうち、大きな方は、円形の蓋の中心部がへこんでいて、小さな樽は同じ部分が平であるとのアスケーリ氏が説明。大きな樽は液体の圧力が大きく、蓋の形はそれに対応するためだそうである。大きさだけではなく、古い樽と新しい樽とでは、熟成されるワイの味が違う。
                      最終的には、違った樽で熟成されるワインをまた一緒にするのだそうだが、その比率は、社長をはじめ社内の専門家の味見で決まる。工場の同じ階に味見室が設けられている。 樽での熟成期間は、2年間。瓶詰の工程の階に上がる際に、一般に言われている通り、「ワインの良し悪しはヴィンテージ よって決まる」に関して意見を聞いた。アスケーリ氏は、「良質のブドウが収穫できた年に良質のワインを醸造するというのは、簡単なことです。質の落ちる収穫の年にいか水準を持ち、良質ワインを醸造できるかと言うのが、私たち製造業者にとっての使命です。」
熟成は樽の中だけで進むと信じ込んでいたが、瓶詰のあとでも熟成期間は続くことを教えられた。 瓶詰め作業も全て機械によって行われる。栓はすべてコルク製。一旦瓶詰にされた未来のバローロは、最低4年目に出荷する瓶とそれ以上に長く置く瓶とに分けられ、それぞれの場所に保存される。この保存室で重要なのは、一定の温度と湿度を保つことである。水平に保たれた瓶のコルク栓を通して瓶の外の湿気が内部に影響を与えないように湿度は絶対に65%を超えないように空調されている。この状態で熟成が続くのだそうである。出荷直前に瓶の外側の洗浄、ラベル貼、栓のカヴァー、箱入れが全て機械によって行われる。当日、アスケーリ社の2009年産のバローロは、一本も残っていなかった。
2010年収穫のバローロワインは熟成保存室に寝かされ、年明けの仕事始め以降に最終工程に入るのが、バローロのバローロたる所以で、例外的に譲ってもらうことは出来なかった。同じ敷地にある同社経営のレストランでも、同じ理由から他社産バローロ・ワインで夕食をした。 そのバローロが美味しかったのは言うまでもないが、一本のワインにかけられる手間と拘りを教えられた。「食べる、飲む」が文化であることを改めて確信した訪問であった。