黙らないで!

カルマニョーラ(トリノ県) 3月29日(敬称略)         Questo articolo in italiano
「黙らないで!」と題されたモンド・イン・カンミーノ(歩む世界) の総会が3月29日カルマニョーラで開催された。イタリア国営放送(RAI)の特派員イラーリア・アルピとカメラマンのミラン・ローバティンがソマリアのモガディシュで殺害されてから今年3月20日で20年。当時32歳だったイラーリア・アルピは大量の産業有害廃棄物の処理と武器の密輸出、それに関連する汚職事件の真相に迫り、それが原因で暗殺されたと見られている。しかし、汚染廃棄物を生み出すことは必然である産業の大会社、イタリア秘密情報機関、ソマリアとイタリアの政治家、組織暴力団等が複雑に絡み合い、20年たった今もなお殺害事件の真相は闇に包まれている。著名な元RAI特派員ピーノ・スキャッチャとイラーリア・アルピ協会会長マリアンジェラ・グリッタ・グライネルが事件の背景と現時点での捜査状況について語った。また、現下院議会議長が国家機密下にある書類の公表を要請し、それが受け入れられれば、新たに事件の真相に近づく可能性にも触れた。事件直後に大々的な報じられたように「現地の武力抗争に巻き込まれたただの災難」ではなく、国家的なレベルの判断によって意図的に殺害されたものであることを主張し続けたイラーリア・アルピの両親の努力の成果であると二人は語る。殺人事件の真相だけではなくそれに伴った大規模な犯罪を暴くきっかけにもなった。
続いて四人の講演者が、モンド・イン・カンミーノ  会長の横に座った。アンドレーア・ベルターリオは、消費主義を批判し、経済成長だけが人間の幸福を保証するものではないという運動の実践家であり、環境保護運動の活動家でもある。 L.・スカッビアは、イタリア中部から核施設および高度に放射能汚染された場所を辿り、カザフスタンまでのバイクでの旅を語った。2013年4月27日から5月27日までのバイクの旅は「ロッタ・ヌクレアーレ」と題されている。このイタリア語の”ロッタ”には二つの意味があり、一つは単純に道の意味で「核のルート」。
もう一つは、断絶するという意味の動詞の過去分詞。つまり、「核とは断絶」の願いを込めてのバイクの旅。会場の書籍コーナーでは、その旅の紀行文も販売されていた。映画監督アレッサンドロ・テゼイ、写真家ピエルパオロ・ミッティカ は、1957年以降のウラル核惨事の舞台となったマヤーク、テチャ川、カラチャイ湖を訪問し報告した。撮影とインタヴュー、ドキュメンタリー映画「ウラル山脈のかなたに」を制作中でその一部も上映された。半世紀以上たったにも拘らず放射能汚染は続いていて、乾しあがったテチャ川では、二人の歩くところ放射能探知機の警報が鳴り続ける。完全に3世代を通り過ぎたにもかかわらず、放射能による健康障害が歴然である。これほど大規模の核施設事故にも関わらず、殆ど何も知られていない。福島第一原発事故、チェルノブイリ原発事故に続いて史上3番目の大事故とされているが、このウラル核惨事より少なくとも10倍の規模の事故のあった福島県、50年後の未来は、、、? このドキュメンタリー映画の完成が待たれる。Rotta Nucleare もドキュメンタリー映画「ウラル山脈のかなたに」も、モンド・イン・カンミーノ の委託による。
最後に演壇に上がったユーリ・バンダジェフスキーは、チェルノブイリ事故後、放射能汚染と住民へ健康障害の関係を詳しく調査し発表し続けたベラルーシの医学者。軍警察裁判所から全く別の罪状で強制労働8年の宣告を受ける。氏の場合も原発事故の人体への影響を隠ぺいしようとした当局の口封じ工作の犠牲者である。日本にも福島原発事故後、二度招聘されている。2012年春の日本では、チェルノブイリ事故による放射能汚染の健康への影響について、具体的な医療データーをあげての講演であったが、今回は会場の出席者に向けて熱い呼びかけを行った。チャルノブイリの放射能汚染被害に関しても、また、今後長期にわたって必要である福島の事故後の住民の健康調査や監視とそれに対する対策を、個々の医師や団体に任せるのではなく、国際的な医学協力や情報交換が必要であると語った。
このイヴェントは「NON TACERE (黙らないで!)」 と題され、ジャーナリストの殺害事件、旧ソヴィエト連邦の核施設痕、放射能汚染による健康被害の研究者と三つの角度からアプローチされた。しかし、「黙らなかった」という事だけが三者の共通点ではない。全て地球規模の環境汚染に関わる問題である。原発に限らず、産業の生み出す有毒廃棄物は、この状態を続ける限り増える一方で、その処理の解決策はまだ見つかっていない。開発途上国や国内の特定の地域に無理やり押し付けているだけ。いわゆる先進国の生活様式に疑問を問いかけるという面から、ベルターリオの出席の意味がはっきりしてくる。モンド・イン・カンミーノ の会長、マッシモ・ボンファッティの思慮に拍手を送りたい。
会場の半分は、展示場として使用された。朋・アミーチは、福島第一原発事故関連のデーターを展示。イタリア語版のヴィデオでの情報をテレビモニターを通して流した。このサイトからも朋・アミーチ所有の資料見ることができるが、ここでは、欧州連合の委託による公式の研究チームが、これまでの調査をまとめて今年2月に発表した資料の中から「汚染マップ」を掲載する。それによると日本国土の約15%(後に9%に訂正)は「徹底的な放射能監視地域」と結論。
日本側の発表と大きく食い違っていることに注目していただきたい。また、初めての試みとして、朋・アミーチのテーブルでは、折り紙コーナーを設けた。折鶴に託した平和への願いを 説明すると同時に、希望者には折り方も教えたり自由に持ち帰って頂くことにした。しかし、無断で持っていくイタリア人は一人もいず、「あさこハウスにハガキを出そう!」キャンペーン参加に繋がった。
朋・アミーチの仲間同士や他の団体との交流も深まり、楽しく、かつ有意義な一日となった。